ピストルやナイフといったオブジェに、オオゴマダラという蝶の金色に輝くと言われているさなぎを、さりげなく付着させている。黄金に輝く蝶の蛹のぬけがらは、タイトルから「夜明け」(Dawn)と共に空へと飛び立ったであろう美しい蝶を想起させる。
同時にこの夜明けでは、鑑賞者の主体的参加、つまり想像力を働かせる、というモンタージュが求められている。つまり、何が現実社会における夜明け足りえるのか、というアーティストの問いが内包されている。
この蛹の有機的な形は、見るものにその美しさと繊細さ故、暴力を連想させる人工的オブジェに触れることをためらわせる。自然のもたらす有機的美しさ、という力の下で、人工的な力を寄せ付けない、自然の美の強度が保たれている。そう、そこからが、私たちの夜明け足りうるのである。(渡辺真也)