私は、京都で日本の伝統的な染織技法を学んだ後、様々な技法や素材を試すようになり、紆余曲折するなかで、グリッド状の絵画を描くようになりました。このグリッド状の絵画には、染織からの影響が強くみられ、グリッドが織物の組織図を連想させました。伝統的な染織技法においては、いくつもの工程を気が遠くなるような緻密な手作業によって行います。その結果生まれてくる、人間の制御しきれない領域に、人智を超えたとでも言うべき なにか があると感じています。その「制御とズレ」によって生み出される なにか について研究し、制作することが、私のテーマとなりました。グリッド状の単純な形態を描くことは、パソコンで簡単にできるような行為です。しかし、敢えて手を使って描くことによって、その なにか を露呈させることが出来るのではないかと考え、日々制作に励んでいます。