紙を基本のマテリアルとして使用するアーティストは数あれど、紙(=紙幣)そのものが媒体となりナイフがペンのかわりとなるアーティストはそうはいないだろう。形態的には、紙幣はただの紙であるが、その紙の意味するものにくっきりと光を当てたのが、ジャスティン・スミスの作品である。
本作、「The Absolute Power」は、USドルのみが貼り付けられている。アメリカがUSドルでパワーを買い取っているという事実、そして今一番力をもっている最も豊かな国であることを端的に表現しているといえよう。なぜなら銃は、パワーやコントロール、暴力、危機、戦争、そして死の象徴でもあるからだ。しかしながら同時に、本作品はハリボテであり、手で簡単に壊すことができる。堅固に見える本作の実はもろい構造は、パワーの質に対する問いかけとも解釈できるのではないだろうか。