紙を基本のマテリアルとして使用するアーティストは数あれど、紙(=紙幣)そのものが媒体となりナイフがペンのかわりとなるアーティストはそうはいないだろう。形態的には、紙幣はただの紙であるが、その紙の意味するものにくっきりと光を当てたのが、ジャスティン・スミスの作品である。
本作は、世界各国の紙幣が材料となり、7ヶ月もの日数を掛けて制作された、お金に対する作家の考えが詰まった大作である。紙幣は労働が具現化されたものともいえるが、同時にその国の美意識、そして社会の概念と理想が具現化されてもいる。一見カラフルな地図を装っているが、境界線をはっきりと指し示したきわめて政治的な地図作品である。そしてこの地図は将来どう変化するともわからない。まさに“現代”の作品といえるのではないか。