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海外のアートフェアでもときどき見かけるシリーズの作品です。ドナルド・バチェラーの1点モノ、89年のドローイング。バチェラーの絵はどれもかわいいですが、とりわけ人を描いた作品はこの作家の真骨頂と言えます。これぞバチェラー!
ドナルド・バチェラー
Donald Baechler
インク/コラージュ
Ink/collage
ボルチモアの美大卒業後、ニューヨークに出てクーパー・ユニオンで学んだバチェラーの作品は、子供が描いた下手くそな絵としか見えない。それもそのはず実際に子供の絵を模写し、そのスケッチをもとに制作されるのだ。ほかにもトイレの落書き、精神病患者の絵、古いコミック、中華料理店の紙ナプキンなど、自分では描けそうもない面白い形や、想像もつかないイメージを見つけてきては、スケッチして集めておく。制作はコレクションしたスケッチの中から、慎重にいくつかを選び出して構成することから始まる。一見無雑作に描かれたかに思われる画面は、実は念入りなイメージの選定作業とその配置に十分な時間がかけられているのだ。たまたま出会った人に、何か絵を描いてもらい、それを材料とすることもある。素朴なコミュニケーションとシンプルなものの持つ美、そしてさまざまな組み合わせ。彼の作品が評論家たちからトゥオンブリ、ライマン、そしてラウシェンバーグやシュヴィッタースと比較され賞賛される理由はそこにある。