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木々が葉を落とした林の中央、くぐもった水色のなかくすんだ赤いハートが浮かんでいる。背景の木の幹や枝はインタリオ(凹刻版)によって繊細かつ微妙な線描表現がなされている。左上にはWeeds(雑草)の文字と寂しげな花。赤と水色とはさらりと筆で絵の具が塗られ手彩色らしいしっとりした質感が目に優しい。メランコリックな雰囲気はハートには似合わないはずなのだが、ちょっと大人のハートなのかもしれない。
ジム・ダイン
Jim Dine
インタリオ/墨/手彩色
1935年6月16日、オハイオ州シンシナティ生まれ学生結婚をしてオハイオ大学卒業後、ニューヨークへ出たダインは、オルデンバーグ、アラン・カプローと一緒にハプニング(パフォーマンスの原型)を行い美術関係者に注目される。最初の個展は1961年マーサ・ジャクソン・ギャラリー、翌年以降もソナベント、シドニー・ジャニス、といった有名画廊での個展が続き、1970年35歳にしてホイットニー美術館で回顧展が開かれるまでになる。工具(祖父が金物屋だったため10代の頃ダインは店を手伝っていた)、バスローブなど身近なものを描いて着実な人気を得る。ハートは1965年シェイクスピア『真夏の夜の夢』の舞台美術で用いて以来、頻繁に扱われてきた。子供でも知っている愛のシンボルを単独に絵にすることははばかられるためか、絵の題材とされることは少なかったが、困難を乗り越えて立派なハートの絵を自分のものとし、ジム・ダインの代名詞にまでなしえたのである。