福田真規は1984年大阪府生まれ、多摩美術大学大学院を今春卒業する若手ペインターです。
陽光が薄く射す窓のある部屋や片隅に椅子が置かれた部屋といった室内の風景を深みのあるタッチで描き、静寂をたたえた幽暗な空間を作り出します。
一見すると写実的ですが、本人の意識はその向こう側にある「空気感」-それは何かの気配であったり、遠くの音や記憶、孤独といった感情など、静かな部屋に一人で佇み感じる事の出来る空気-に向けられています。
これまで描かれてきた窓には外の風景が存在せず、閉じられたり曇ったりしているその場所には孤独感や寂寥感が塗り込められていました。
しかし最近の作品に描かれる窓からは、向かいの建物やその窓などをそっと垣間見る事が出来ます。
そこには梅雨時のじっとりとした湿気や冬の冷たい木枯らしといった外の空気が息づいており、部屋の内と外でそれぞれの匂いが立ち上ります。
それは環境や心境の変化による外部への志向の片鱗であるかもしれず、またはより芳醇になった孤独の香りなのかもしれません。
自身の心の琴線に触れるものを丁寧に汲み取り描き出す行為に執心する事で生まれるこれらの作品は、この現代に希有な繊細で滋味のある絵画だと言えるでしょう。