諸泉茂は、1981年に温度計を自身の作品の素材に選んで以降、温度計をモチーフとしたさまざまな作品制作を続けています。本作品「羽ばたくハート」は、温度計のそのものの形を変化させ、作品化した最初の作品で、諸泉の作品のなかで最も人気があることでも知られています。小さな桐の箱に収められたのは、目盛りのないハート型の温度計。諸泉は、眼には見えない温度を意識させる装置として温度計を用いた作品を制作してきました。目盛りをなくすことによって、温度そのものに焦点が当てられることに加えて、ハートという形を得たことで温度を表す機能が明確化された作品と言えます。ひとつひとつ手作りでつくられているハート型温度計は、結婚式のお祝いやプレゼントとして多く使われています。