版画を作るときは、油絵ともドーローイングとも違った表現が出来ないものかといつも思います。しかしこれまでの作品ではどうしても版画インクと油絵具の質感とを比較してしまい、油絵に近い表現になるようにしていたと思います。逆に今回は油絵の質感に近くならないように意識したせいか、ドローイングの要素に近くなったのではないかと思います。髪の毛は何度か試刷りを繰り返しましたが、主版に描いた髪のイメージとそこから透けて見える紙の色、それに重ねた色版が折り重なって髪の質感と軽やかさにつながったところは、少し版画でなければ出来ない要素を見出せたかなと思っています。
小林孝亘 20070602